小児看護に興味をお持ちの方、「乳児院の看護師」も今後のキャリアの選択肢の中にありますか?
小児科病棟・外来勤務を経て、現在乳児院勤務5年目の私が、乳児院看護師の魅力と実際のところをお伝えします。
乳児院とは?
家庭で暮らせない新生児~小学校入学前までの子どもを預かり養育しながら、
家庭復帰や里親委託、もしくは次の施設(児童養護施設等)に繋げていく施設
です。 家庭で暮らせない理由は保護者の病気や若年、ネグレクト、虐待など様々です。
中には保護者にどの施設で保護しているか秘匿でお預かりしているケースもあります。
子どもがその乳児院に居ること自体が保護するべき個人情報なので、外観から中の様子は見えないようなつくりになっている場合が殆どかと思います。
なので、実習などで経験しない限り多くの人にとって未知の世界ではないでしょうか。
乳児院で働く看護師の役割
乳児院の子ども達にとって、乳児院は家庭の役割。病院とは違い家庭的な雰囲気であるようにつくられています。
入所して保護者と離れている間、看護師、保育士をはじめとした職員が親代わりの役割を担っています。
乳児院での看護師の仕事
乳児院の多くは担当制を設けています。病院でいうところのプライマリーナースのように1~2名の子どもを担当します。
仕事を大まかにわけるとこのようなかんじです。
- 担当者が中心となって養育を行う
- 保護者の対応や育児指導
- 児童相談所等の関係機関との会議に出席して必要な情報提供
赤ちゃんの頃から担当者と一緒に歩み成長を見守るうちに、本当の親子かのように顔つきまで似てくることもよくあります(^^)
乳児院ではひとりの子どものケースに長期間関わります。ケースカンファレンス等で多職種の意見を取り入れながら、主体的に自分なりの看護を実践できるので、小児看護をじっくり探求することができます。
乳児院看護師の役割と、求められる能力
乳児院看護師は入所児全体の健康管理と養育者としての役割を担っています。
健康管理としては、
- 乳幼児健診や予防接種の管理
- 体調不良やケガをした子どものケア
- 診察の介助、他院受診の付き添い
- 喘息など家庭でのケアが必要な子どもが外泊や家庭復帰をする際の保護者への指導
- 乳児院内の感染対策
などがあります。
乳児院で看護師として働いてわかったこと
乳児院での看護師の配置人数
入所児の人数により看護師を配置する人数が定められています。
看護師の人数が2~3人程で、主に健康管理に徹している所もあれば、5〜10人程で養育者としての仕事をしつつ全体の健康管理も行っているという所もあります。私が見聞きした範囲では後者のほうが多い印象です。
乳児院ならではのお仕事
看護師は看護の仕事だけ出来れば良いのではなく、保育士さんと一緒に、子ども達と月齢に合わせた遊びをしたり、季節の行事に取り組んだり、壁面の装飾をしたりといった、病院勤務では求められなかった能力を求められます。
行事や装飾は得意な人にとってはクリエイティビティ―を発揮できて楽しいですし、苦手な人にとってはちょっと逃げたい仕事かもしれません。
乳児院で難しいと感じること
私が個人的に難しいな…と感じるのは、子どもたちが玩具を取り合うなどの喧嘩の仲裁や、子どもを叱らなければならない場面。
保育士さんは、プロとして上手に筋を通して子ども達を導くことが出来ていますが、看護師にはその能力は備わっていないことが多いです。
甘やかしてしまって本人の為にならない、というところに陥りがちです。
病院での看護は基本的に1対1の関わりで、治療が第一なので看護師が子どものしつけをする場面は少ないですよね。
乳児院では子どもに一定の規律を守らせたり、トイレトレーニング、ダメなことはダメと教えることが必要な場面も多くあります。
私は尊敬できる保育士さんを見つけて対応を見て学ばせてもらっています。自分の苦手分野も他職種と補いあいながら学ぶことができるのも乳児院の良いところです。
乳児院看護師の意外なお仕事
病院勤務の看護師には無い、乳児院ならではの仕事内容を紹介します。
①子ども達と一緒にご飯を食べる
乳児院では大人も毎食子どもと一緒に給食を食べます。
検食の意味もありますが、それだけではありません。子どもにとって家庭の食卓なので、子どもと大人が一緒に食べることに意味があるのです。
②子ども達と一緒にお風呂に入る
子どもだけで入浴させて大人の裸を見たことがないまま家庭復帰や里親委託に移行した場合、いざ大人と一緒にお風呂に入ると裸を見て怖がって泣いてしまったりするそうです。
沐浴を卒業したら、保育士や看護師が一緒に裸になって入浴します。慣れるまでちょっと戸惑う人が多いと思います。
でも、子どもにとって大切なことなのです。(女性が多いので、男性の裸には免疫がつかなかったりします。)
③遠足
年に数回、担当の子どもとグループで遠足にも行きます。
月齢や興味に合わせて動物園、水族館だったり、遊戯施設だったり、電車が好きな男の子たちで新幹線を見に行ったり。
沢山写真も撮って成長の記録も残します。バスや電車に乗って楽しい場所に行って、外食もして、お土産も買います。
看護師は経管栄養や導尿などの医療ケアが必要な子どもの処置も行います。
乳児院での生活ではどうしても社会体験が少なくなってしまうので、計画的にそういった機会をつくっています。
仕事中にこんな楽しい時間を過ごして良いのかな~?と思うくらい楽しいですよ。
④行事
保育園のように、節分、ひなまつり、こどもの日、七夕、お月見、クリスマスといった行事を行います。
運動会の実況中継やクリスマスの司会の仕事なんかも、順番でまわってくるので人前に出るのが苦手な私はびくびくしています。
乳児院看護師になるには?
必須ではありませんが、小児領域(小児科、母子周産期)での看護の経験があるとスムーズです。子育て経験も役に立ちます。
頻度は少ないですが急変対応も無いわけではなく、病院より少ない人数(もしくは自分ひとり)で対応しなければならないので、病院経験も1~3年位はあったほうが良いかな、と思います。
まずは通える範囲内の乳児院を調べてホームページを見てみましょう。
看護師の求人情報が載っていることが多いです。比較的業界全体が人手不足です。
病院附属の乳児院であれば、その病院の採用試験を受けて、乳児院配属を希望するという手もあります。(違う部署に配属となる可能性もありますが・・・)
気になる方はまずはボランティアもオススメ
ボランティアを積極的に受け入れている乳児院が多いので、まずはボランティアとして活動してみるのもおすすめです。
私の職場には看護学生さんもボランティアに来ています。内部の状況がよくわかり、自分に合っているか確認することができます。
子どもたちや職員との関係性ができてくると、そのまま就職に繋がるケースも多々あります。
いかがでしたか。乳児院看護師の魅力が伝わりましたでしょうか。
健康管理は勿論ですが、一番大切なのは子どもと愛着を形成して、子どもの安全基地となること。
担当をもつたびに様々な個性をもった子どもの子育てを何回でも経験することができます。
子どもと関わるのが大好きな人には是非勧めたい仕事です(^^)/
この記事を書いた人
mamaco
看護師16年目、乳児院5年目、2児育児中。副業Webライター目指して初仕事です。
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