私は2児の母、しかも子供は年子です。
思いがけない2人目の妊娠に不安しかなく、まだ歩けない上の子のお世話と、つわりと、お腹と腰の痛みに悩まされ、毎日疲れきっていました。
そんな時の定期検診。いつもの担当医とは違う、ぶっきらぼうな先生。
「お腹が痛いです」「水しか飲めません」「大丈夫なんでしょうか」
私は赤ちゃんの心配より、自分の心配をしていたかもしれません。それを見抜いたのかは分かりませんが、先生は面倒くさそうに、目も合わさず、
「これぐらいのこと…」
とパソコンを見たまま吐き捨てるように言って、診察は終わりました。
あまりにもびっくりして、しばらく固まっていたんじゃないかと思います。先生の後ろに立っていた看護師さんも目を見開いていて、目が合いました。
私は一呼吸おいて、診療終わりのお礼も言わず、乱暴にドアを開けて退室しました。確か採血か何かでまだ帰れず、廊下のベンチで待機していたのですが、悔しいのか悲しいのか、涙が止まりませんでした…。
それを、たまたま通りかかった、事情を全く知らない看護師さんが、個室へ連れて行ってくれました。希望に満ちた産婦人科の廊下で泣いている妊婦は、さぞ異様だったでしょう…。かなり驚いた様子でしたが、少しずつ話を聞いてくれました。
でも私は「先生に嫌なこと言われた」くらいにしか答えられてなかったと思います。その看護師さんは、先生の肩を持つでもなく、黙って聞いくれて、採血も個室で行えるよう準備をしてくれました。
しばらく個室で待っていると、次に来てくれたのは、診察室で目の合ったあの看護師さんでした。事情を聞いたのでしょう、きっとまだ先生と診察があっただろうに、私の所へ来てくれたのです。顔を見た瞬間、私はまた涙が止まらなくなりました。
たったこれだけのことで、仕事中の看護師さんを2人も巻き込んでしまったこと、個室まで用意してもらったこと、いい大人が人前で涙が止まらないこと、全てがぐちゃぐちゃになって余計泣けて仕方なかったです。
事情を知っている看護師さんは、採血をしながら、「ちょっとやな感じだったよね」「不安なのにね」等、やや距離感を保ちつつ励ましてくれました。泣いている私にとって、この距離感もとてもありがたかったです。あまりに寄り添ってもらったら、もっと泣けてしまっていただろうから…。
妊娠以外で病院へ行く機会がほとんど無かった私にとって、看護師さんとは先生の補佐的存在だと思っていました。
でも今回のことで、白衣の天使と呼ばれる所以が分かった気がしました。医療行為だけでなく、不安な時や、弱った心に寄り添ってくれるのが看護師さんなんだな、と心から思いました。
あのまま廊下で泣いていたら、他の幸せいっぱいの妊婦さんに嫌な思いをさせていたかもしれません。私もいつまでも泣き止めなかったかもしれません。
あの時声をかけてくれて、本当に心が救われました。すごく嬉しかったです。
お腹の子はもうすぐ3歳になります。あの時の子です、とお礼が言いたくても言えないので、この場を借りて…。
本当に、ありがとうございました。
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