MENU

あの時、声をかけてくれた看護師さんへ【何気ない一言で救われた】

2020 5/10
あの時、声をかけてくれた看護師さんへ【何気ない一言で救われた】

随分と前になりますが、彼がガンだとわかり入院をしたときのこと。私は毎日、仕事がおわって走って駅に向かい彼に会いに行っていました。

30分しか会えない日もあったけれど、私にできることはそれぐらいしか思いつかず。病棟につけば、いつもの看護師さんたちがいました。軽く会釈をして足早に病室にむかう毎日。

次第に、病院に行くというのは当たり前になっていきましたが、それでも私にとって病院というのは非日常の空間です。その非日常の空間に足を運ぶということはなかなか慣れませんでした。私と彼が全く違う世界に生きる人間のように思えていたのです。

彼の病室は上階だったので夕方は夕日がとてもきれいでした。少し感傷的に見ていた時「ここは夕日が本当にきれいに見えるの〜!きれいでしょ〜?忙しくてそれどころじゃない時もあるけどね!」と看護師さんが茶目っ気たっぷりに声をかけてくれました。

この一言でそれまで非日常の空間だった病院が、日常空間のように思えたのです。看護師さんたちにとってはここ(病院)が勤務先で、私が職場に行って仕事をしていることと同じなんだ。ただ、彼女たちにとっては”看護師”が仕事なだけで。そう思えた時から、病院という非日常の空間のストレスが随分と軽減されました。

あの時声をかけてくれた看護師さん。あなたはもしかすると、ただただ日頃たまった感情を呟いただけかもしれません。だけれど、私は、あなたのその「普通」の感じがとても安心しました。

大切な人がガンになり、病院という非日常空間に会いに行くというのは『普通ではない』という状態に光があたりすぎてしまいとても辛かったので、『普通』を意識できたことはとてもありがたかったです。

これが現実なのだと受け入れるほかなかったですが、それでも急なことに気持ちが追いつかない日々。そんな中で、「至って普通」にしてくださり、私にとってはそれが支えでした。

ついつい医療従事者の看護師さんたちには聖母マリアのような、仏のような、母なる大地のような人柄や対応を求めてしまいがちです。現場で働いている皆さんはそういう言葉を言われたことももしかしたらあるかもしれません。

けれども、看護師さんだって私たちと同じで「働く人」ですよね。強い想いをもって看護師さんになっても、やれ患者さんのことや、患者さんの家族のこと、職場のあれこれに忙殺されているかもしれません。

ただ、お医者さんではなく、看護師さんからの声かけというのはなんとも言えない安心感があります。きっと多くの患者さん、そしてその家族の支えになっていると思います。

声をかけてくれた看護師さん。あの時は本当にありがとうございました。あなたに心の傷を癒してもらいました。

この記事を書いた人

看護師として働きながらWebサイトを運営しています。自分らしく働くことを応援しています。

コメント

コメントする

目次
閉じる